アスペのグレーゾーンが不安を書くブログ

アスペのグレーゾーンが不安を書くブログ

アスペルガーグレーゾーン(仮)の社会人が日々の不安や気になる本について書くブログです。

5/5の不安:安宅和人「シン・二ホン」ニューズ・ピックス

安宅和人「シン・二ホン」ニューズ・ピックス

 皆さん如何お過ごしでしょうか。

ステイホーム週間ということで読書されている方も多いかと思います。

私はここ2日間ばかりYouTubeの視聴に明け暮れていたわけですが、これではいかんということで以前より気になっていた下記の本を読んだわけでした。

 

 

本書は400ページを超える大作で最初から最後まで腰を据えて読み込もうと思えばGWが明けてしまいそうだったので、斜め読みすることにしました。

自分にできること

 かなりざっくり書くと、第1章がAI関連の話、世界の動向、第2章が日本が出遅れているという話と日本はキャッチアップは得意だよという話、第3章が求める人材像について(その他、知覚に関することとか)、第4章が求める人材をどのように育成するかという話、第5章が国家予算の話、リソースの再配分についての話、第6章が自然環境を含めた生産活動に関する話(「風の谷」の創生)という感じです。

特に、第3、4、6章は面白く読めました。これから何を勉強して身に付けいていけばいいのか、どのような環境を作っていくべきかという点での議論に興味を持てたからです。

ただし、この本で議論されている「求められている人材像」はこれから教育していくべき若者の姿であったり、計算機科学分野に携わる人たちであって、私を含めたそれ以外の分野の既に20代とか30代、40代の大半の人たちはこの時点で議論から排除されているように感じました。

「30代、40代の人たちは何もしないよりはマシだから、勉強すべし」とか、「才能は確率であり、ある程度人材の層が厚くないと才能のある人材は獲得できない」というような記載もありましたので、やはり著者が今の日本に必要と考えている人材は少数の特定の人を指しているのだと思います(まあ、当たり前か。。。)

また一方で、日本にはICT以外の分野でも伸び代があってそこで勝負できることや、出口産業(自動車、家電、鉄、ファインケミカル、建築・土木等)にAIやビッグデータの技術を生かすことについても触れられてはいますが、上記の出口産業に携わる人たちがどうすべきかは書いてなかったように思います。

確かにこれからの時代を引っ張っていくのは、情報系の高度な技術を持つ人たちや若い方たちなのだとは思いますが、どうしても排除されてしまった感、置いてきぼりを食らっている感が否めません。

ですので、この穴(本書で議論の対象とされている人たち以外がどうすべきか)を埋めなければ、自分を含め多くの人たちは救われないのかなと思います。

なのでまずは、この点について自分はどうすべきかを書いてみたいと思いますが、なかなか難しい。。。

まず自分を慰めるために書いておくと、一つには私は建設業界に勤めているわけですが、日本の国土、社会基盤なくして経済活動は出来ないわけで、自分にも少なからず役割はあるということです。それともう一つ、理解の仕方が間違っているかもしれませんが、経済学の「比較優位」の考え方によれば、たとえ他者と比較して生産性に劣っていても各々がそれぞれの得意な分野の生産活動に特化すれば、全体としての生産性は上がるわけで、劣っている者の存在価値がなくなるわけではないということです。

そう考えると、私が今からAI等を勉強して本書で求められているような人材になる必要はないですし、自分の専門を今更変える必要はないと言えそうです。

これは勉強しない理由を正当化しているのではありません。上記にも書いた通り、AIの専門家でなくてもこれから建設分野の技術と情報分野の技術とが掛け合わされてくることはあるので、一般教養としてAIやそのICT等の全体像を掴んでおく必要があり、そのために勉強をする必要はあるかとは思います。

またAI関連の技術以外でいえば、著者は人間力(明るさ、前向きさ、建設的な発言、茶目っ気)や知覚する力(感性や感覚によるもの)、世界語で伝える力(英語か中国語)、日本語で考える力(文法学、論理学、修辞学)等が必要であると述べているので、こういったところは今から鍛えても遅くはないような気もします。

ただ、ひたすら勉強しても何も変わらないので、将来的にはアウトプットに繋がる何か行動に移さないとダメなんだと思います。それが何かはわかりませんが。。。

個人的には全く異なるものが繋がって何かが生み出されることにわくわくを感じるので、そういったところで活躍できればなあと思います。

(まあ実際に社会で活躍するには本書にもある通り人間力が必要であって自分が一番苦手とするところなのでこの社会で生きていけるかまずわかりませんが。。。)

また、アメリカの大学ではOBが大学に寄付をするというような話がありました。この話と同じように、将来的に私が金銭的か、何かしらの手段で若者の教育を支援することもできます。これは私自身が直接的に活躍したことにはなりませんが、私自身が社会の構成員であるという感覚からすれば十分社会のためになっているのであって、自分にできることが全くないわけではありません。

以上が、自分にできるかなと思われることです。

「風の谷」の創出

そしてもう一つ、考えを記しておきたい事項がありました。それは第6章でエピローグ的に語られている「風の谷」創出の話です。

これは都市部に集まり過ぎている人口をどうにか地方に分散できないかという話です。ただの町おこしではないところが面白いです。

問題は山積みですが、私も地方出身者であるので、これが成功したら理想的だなと思います。

かく言う私は将来的に地元に帰る気がないわけなんですが、要は私みたいな人間が田舎で住みたいと思えるようになれば大成功ということだと思います。

本書ではインフラ整備の予算から、教育、健康医療システム、都会に対抗する求心力等の課題が列挙されていました。

私は都会に対抗する田舎の求心力となるものはやはり自然しかないと思います。ですので、本書でも「土地の重層的な記憶を活かす」と表現されていましたが、景観工学的なアプローチで緑を整備していくことが大事だと考えました。かなり凡な考えですが、これにある程度の規模を持った街へのアクセスのし易さが加われば、多少住んでもいいのかなと思います。

きっと皆さんも一人暮らしで物件を探す際は、駅や主要都市へのアクセスが簡単で、できれば南向きで、ベランダからの眺めがいい部屋の方がいいと思います。

 それで景観工学的なアプローチとしてキーワードになるのは「隠れ場―見晴らし理論」「グリーン・インフラ」です。

「隠れ場―見晴らし理論」というのは、イギリスの地理学者ジェイ・アプルトン氏が唱えた理論です。

人間にとって心地よい眺めの形式は、「周囲から隠れた場所に身を置きながら、周囲への見晴らしを得られる状況」と考えるものです。

なぜ上記の状況で心地よい眺めが得られるかというと生物として有利な状況にあるからです。自分の姿が隠れていれば、外敵から狙われることはありませんし、逆に自分は見晴らしのいいところにいるので、状況の変化を察知し易く有利だと言えます。

したがって、この理論から、心地よい眺めが得られる場所はどういうところかと言うと、高台の上からの眺めであったり、日本家屋の和室から縁側を通して眺めた庭園の眺めであったり、山を背にして眺める田園風景であったりすることになります。特に上記3つのうち後に示した2つの景色は日本の原風景だと思います。

上記は以下の図書を参照しています。

 

ゼロから学ぶ土木の基本 景観とデザイン

ゼロから学ぶ土木の基本 景観とデザイン

  • 作者:佐々木 葉
  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 また、グリーン・インフラは何かというと、「社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能(生物の生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の 抑制等)を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進める」取り組みのことです(H27.8国土形成計画)。

環境:グリーンインフラ - 国土交通省

グリーンインフラは以前から存在する「生物多様性」や「低炭素型社会」 といった概念も取り入れられたかなり大きな概念のようです。

また、グリーンインフラは自然環境を重視する一方で、人工構造物の存在を否定するも のではありません。単機能ではあるけど効率的な人工構造物と、育成には時間が掛かるけど多機能な面を持つ自然環境とを最適に組み合わせることも重要視しています(「日経コンストラクション」2016.7.25)。

身近な例で言うと、河川の整備の仕方にグリーンインフラの考え方が現れていると思います。

以前までは河川の改修等はコンクリートの護岸で、かつ画一的な断面で整備されることが多かったわけですが、最近はより自然な河川の形を表現するように、護岸はコンクリートでも植物を増やしてビオトープのようにしたりする整備の仕方が増えて来ています。このような整備の仕方はグリーンインフラの一環のひとつだと言えると思います(ほんとはもっと広い概念)。

これらのキーワードとなる考え方が「風の谷」創出にどう生かせるかはここでは全く書けませんが、少なからずコンセプトづくりや、整備の方針を決める際にヒントをくれるのではないかなと思いました。

景観を多少考慮した街づくり、村づくりができればその地域、日本という国土に愛着を持つ人が増えるのではないかと思います。

具体的な考えが提示できませんでしたが、第6章については以上です。書きたいことは書きました。

恐らく多くの読者は私のように、著者にとってはアウト・オブ・眼中の存在だとは思いますが、考えるヒントや気づきを与えてくれる情報量の多い一冊だと思います。

きっと多くの日本に住む方が手に取って考えることが大事なんだと思います。おすすめしておきます。